高齢者の閉じこもりが生むリスクと対策
ご家族が年を重ねるごとに外出を避けるようになってはいませんか?
自宅にこもったまま過ごす単調な生活は、認知症やうつ病の発症を高める危険性があります。
今回は、その原因・リスクと対策についてご紹介します。
高齢者の外出が減ることの原因
ではまず、高齢者の外出頻度が減少する一般的な原因についてみていきましょう。
加齢による心身の変化
加齢によるごく自然な生理的変化に、運動機能の低下や視覚、聴覚といった感覚器の機能低下があります。これらの機能が低下すると頻尿や難聴などが起こりやすくなります。どの機能も外出の際には不可欠なものばかりで、機能低下は外出するのが怖くなったり、億劫(おっくう)になったりすることの一因となります。
病気
糖尿病や高血圧症など、高齢になると持病が複数ある場合も。これらの持病のために体調が安定しない人のなかには、外出先で体調が悪くなることを恐れて外出を控える人も少なくありません。また、病気であったり身体機能に障害があったりするとうつ病になりやすいといわれており、持病による体調不良のほかに、うつ病の症状によって閉じこもりがちになる場合もあるようです。
家族による過保護
高齢になったご両親が外出した際に、過去に転倒して骨折などのけがをした経験がある場合、介護する家族が心配して、ご両親に外出を極力控えるように話している場合があります。認知症がある場合はより過保護になってしまう傾向も。
他人に迷惑をかけたくないという思い
なかには、外出したいという思いはあっても1人での外出が難しい場合、「他人に迷惑をかけてしまう」と考えて、外出することに抵抗を感じる方もいるようです。
外出が減ることで高まる高齢者へのリスク
外出頻度が減ると、心身の健康状態を悪化させてしまうリスクを高めてしまいます。
寝たきりの危険性
ある調査では、閉じこもりの高齢者の3割が1年後に寝たきりになるという報告もされています。(首都大学東京 健康福祉学部 藺牟田 洋美 氏らによる調査)
認知症の危険性
家に閉じこもりがちな人は認知症になりやすいというデータもあります。
ある研究では、退職後に不活発な生活を継続した人の、大脳皮質灰白質における脳血流量と認知機能が、4年後には、活発な生活を送っていた人に比べて著しく低下していたという結果が報告されています。(1990年に行われたRogersらによる研究)
うつ病の危険性
閉じこもりがちになり社会との関わりが減少することと、うつ病の発症には、相互関係があることが指摘されています。人とのコミュニケーションが減少することで気分の落ち込みが強くなり、うつ傾向になってしまう場合もあるようです。
運動機能低下の早まり
閉じこもりでは、家庭内での生活に必要な動作だけとなってしまうため、運動機能の低下も早まります。高齢者の運動機能の低下は、転倒の原因や抵抗力の低下、さらには寝たきりの原因にもつながるのです。
ご家族に元気に年を重ねてもらう為に外出をうながす3つのポイント
見てきたように、外出することはそれだけでとても大切なことなのです。それでは、ご家族が自宅にこもってしまうことを防ぎ、元気に年を重ねてもらう方法について考えましょう。
一つめは、「外出する目的を作ること」です。何も目的がないのに外出をすすめることは、高齢者に不快感を与えかねません。ご家族の趣味やあきらめかけていた娯楽に再チャレンジするなど、外出する意欲や目的をもって、、もらえるように働きかけることが大切です。ご家族だけでの外出が難しい場合には、外出の方法について話し合い、お互いに安心できる方法を考えることが重要なポイントになります。
二つ目は、「定期的に外出する習慣をもつ」ことです。毎日は難しくても定期的に外出する習慣をもつことで、新しい刺激を得る機会や社会との関わりを維持することができます。長年楽しんでいる趣味や娯楽などがある場合は、それを活かした外出の機会をもつとスムーズに習慣づけることができるはずです。
三つ目は、「ご両親に、外出することは認知症やうつ病の予防になるという自覚をもってもらうこと」です。外出が減るとこれらのリスクが高まるとお伝えしましたが、逆にこれらを患うことで外出が減り、悪循環をもたらしてしまうことも起こり得ます。生活習慣や食生活などを見直していくとともに、生きがいとなることを再確認することが大切です。刺激の少ない単調な生活は、認知症の発症を助長するだけでなく生活意欲まで低下させてしまいます。
また、加齢や持病によるからだの弱りを理由に「人に迷惑をかけたくない」と、外出を控えている場合には、思い通りに自分で操作でき、管理が簡単なシニア向け「電動カート」という選択肢もあります。電動カートを活用することは、ちょっとした用事でも自分の希望するときに気軽に外出できるので、自発的な外出をうながすことにつながります。
まとめ
高齢のご家族がいきいきと社会との関わりをもちながら生活していくことは、介護の負担軽減にもつながります。
自立を希望されるご家族に、さまざまな工夫やアイディアを提案しながら、活用できるものを最大限に取り入れてサポートしていくことはご家族の尊厳を守ることにもつながります。