高齢者の自立支援介護について
加齢に伴い、「自分のことは自分でなんとかしたい」と思っていてもできなくなることが増えてしまいます。
ご両親に、いつまでも自立した生活を継続していただくために、家族はどのような自立支援を行うべきなのか、事例を挙げてご紹介します。
1人でトイレに行くのが難しくなってしまった場合
トイレに行くことは、単に排せつをするということだけではありません。尿意や便意を脳で感じてトイレに行こうとする認知機能にはじまり、トイレに行くまでの歩行動作、便座に座る、立ち上がるといった運動機能や排せつ機能などを総動員する、とても大きな意味を持った生活動作です。
加齢に伴い、運動機能が低下してしまうことは避けられないため、トイレまで1人で行くことが難しくなってしまうケースは数多くあります。しかし、介護保険の福祉用具レンタルを活用したり、住宅改修を行ったりして、ご両親の身体状況にあった環境を整えることで、1人でトイレに行けるようになるケースも少なくないのです。
例えば、便座に座ったり立ち上がったりする動作が難しいようであれば、便座の高さを変えてみましょう。「補高便座」という福祉用具を今の便座の上にのせることで便座の高さを上げることができます。
また、便座まわりに「トイレフレーム」という手すりを設置する方法もあります。トイレに行くまでの間に転びそうになるのであれば、ベッド横や部屋の入口に簡易型の手すりをレンタルで用意しましょう。
身体的な問題をすぐに解決することは難しいですが、福祉用具を活用すれば住環境は整備できるのです。
1人で入浴できなくなってしまった場合
入浴の目的は身体の清潔を保つことにありますが、心身のリラックス効果もあり、入浴を楽しむことは生活するうえでとても大切です。
浴室まで歩くのが大変になった、浴槽をまたぐのが難しくなった、浴室で転びそうになるといった理由で入浴の機会が減ってしまうことや1人で入浴できなくなることは避けたいもの。浴室内が滑りやすい、浴槽に入りにくいといった問題に対しては、福祉用具の活用や住宅改修工事による支援で対応できる場合もあります。
浴槽をまたぐことが難しくなった場合は、浴槽のふちに「グリップ」という簡易型手すりを設置し、浴槽内に「すのこ」を敷くことで、浴槽への出入りがしやすくなります。
浴室内が滑りやすいのであれば、浴室の床に「すのこ」や「滑りとめマット」を敷いて転倒を予防しましょう。
部屋から浴室まで歩くのが大変なら、入浴用の車いす「シャワーキャリー」を利用する方法があります。
シャワーキャリーは車いすよりも若干小型で、座ったままシャワーを利用できるように設計されているため、多少ぬれても問題ありません。
1人での外出が困難になってしまった場合
足腰が不自由になると、どうしても外出する機会が減ってしまいます。しかし、定期的な通院はもちろん、買い物や余暇活動で外出することは、生活に楽しみを持つ意味でもとても大切です。
「高齢になった両親1人で外出することは難しくなったけれど、家族も仕事のためになかなか外出に付き添うことができない」といった声に応えて、外出支援に取り組む地方自治体が増えています。
外出支援の取り組みで多く見られるのが、民間のタクシー会社や介護事業所が行っている、有償の送迎サービスです。このサービスでは、ご家族に代わって目的地までの送り迎えを行ってもらえます。
市区町村の社会福祉協議会などでも、有償になりますが、同じようなサービスを行っていることもありますので、最寄りの自治体の窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
歩行困難が理由で付き添いが必要な場合は、介護保険を利用して電動カートをレンタルする方法もあります。長距離の移動はできませんが、近所への買い物や友人宅の訪問にはとても便利です。
介護保険を利用すれば、月額2,000円前後でレンタルできます。
まとめ
入浴、排せつ、歩行など、加齢に伴って1人でできないことが増えてしまうのは仕方がないことです。しかし、できるだけ自立した生活を続けてもらうために、どのような支援を行えばよいのかを考えることは、ご両親の自立支援を行ううえでとても大切なことです。