高齢者の自転車事故を防ぐ方法
高齢者の自転車事故はほかの年代に比べて圧倒的に死亡率が高く、交通事故対策は社会問題となっています。
交通事故は複数の要因が重なって起こるものですが、年齢を重ねることによって生じる要因にスポットを当て、事故に遭わないためにできることを考えてみましょう。
高齢者の自転車事故の実態
被害者または加害者として、高齢者が関わった交通事故での死者の数が増加していることを受けて運転免許証の自主返納が推進されていますが、あわせて指摘されているのが自転車事故の危険性です。
2011年に起きた自転車事故を年代別にまとめた資料(交通事故総合分析センター「交通事故統計年報2012年」・国土交通省資料)によると、70歳以上の自転車事故での負傷者数は17,409人となっており、16歳~19歳の20,385人につぐ数となっています。
これも十分に見過ごせない数値ですが、さらに注目すべきは死亡率の高さです。負傷者数が一番多かった若年層では、16歳~19歳と17歳~24歳を合わせても自転車事故での死亡者は50人に満たないのに対し、70歳以上では318人と突出した数値になっています。
上2014年のデータ(警察庁発表)でもこの年に起きた自転車での死亡事故は540件で、このうち過半数にあたる345件は65歳以上の方が起こした事故だとされています。
高齢者の自転車事故の要因
交通事故は複数の要因が重なってはじめて起こるものです。
必ずしも事故の原因が人為的な要因によるものだけであるとは限りませんが、加齢に伴う視力の低下や視野の変化、反射神経やバランス感覚の衰えは危険を察知する力やとっさの退避行動などに大きな影響を与えます。
視野が狭くなると危険の察知が遅れます。これまで事故に遭っていないのは、ご自身が気づいていない危険を周囲の人が察知して事故を回避してくれていただけかもしれません。反射神経が衰えればとっさの対応が遅れますし、緊急時にハンドルを操ろうにも、筋力の低下や関節の可動域の狭まりによって思い描いている通りの操作は難しくなります。
若い世代には自転車に乗る高齢者の「ふらつき」や「適切ではない退避行動」などを「危険」だと感じている人も多いようです。これらの行動の裏にある、加齢に伴う身体機能の低下の影響を理解することで、それぞれの行動への「理解しがたさ」を解消できます。高齢者の視界の悪さや関節をはじめとする体の動かしにくさなどを専用の装具によって疑似体験する取り組みも行われていますが、高齢のご家族の置かれている状況や思いを理解しようとすることは、自立した生活のサポートや介護においてとても重要です。
電動カートを新しい「足」とするという選択
ご家族が高齢のご家族の身を案じて自転車の利用をやめるように話をしても、「年寄り扱いするな」「自分はまだ大丈夫だ」「自転車がないと外出に困る、不便になる」などと聞き入れてもらえないことは多いようです。
ご家族としては、自転車事故は怖いけれど、自転車に乗らなくなったことで外出する機会が減り、自宅に引きこもりがちになってしまうことは避けたいのではないでしょうか?
自転車に代わる「足」があれば、自転車に乗らなくなっても、これまでと変わらず自立した生活を高齢のご家族に送ってもらえます。
自転車から電動カートへの乗り換えを勧める際には、乗り換えることで今の生活がどのように便利になるかを伝えるのがポイントです。
さらに、慣れない「乗り物」への乗り換えに不安があるようであれば、三輪で安定感があり、坂道もふらつくことなく楽々登れることや歩道を走行できること、レンタルしたり購入したりする前には納得がいくまで試乗できることなどを伝えるといいでしょう。
まとめ
高齢者の自転車事故が多い背景を理解することで、その対策はおのずと見えてきます。高齢のご家族の自立した生活を支える「足」を確保しつつ、大切な命を守ることを最優先とした行動を選択していきましょう。