高齢者の転倒予防と運動について
転倒によるけがは、高齢者にとって致命的といっても大げさではありません。
それほど、高齢者のライフスタイルや健康にまで影響を及ぼしかねない、危険なものなのです。
高齢者が転倒しやすくなる原因のひとつとして、運動不足が挙げられます。
今回は、高齢者の転倒の原因とそれを予防していくための「運動」に焦点を当ててみました。
転倒が招く、ライフスタイルの重大な変化
高齢者は、骨が弱くなっている場合が多く、何かの拍子でぶつけただけでも骨折してしまうことが多くあります。骨折してしまうと安静が必要になりますし、多くの場合は入院して手術治療やリハビリを行うことになります。治療とリハビリの効果があって歩行機能が回復した場合でも、一定期間は安静が求められます。ベッド上で安静を保つ間に、筋力の低下や関節のこわばりがはじまったり、肺や心臓の機能が影響を受けたりします。
認知症の方に症状の悪化が認められるだけでなく、認知症でなかった方が、長期間ベッドの上での生活を余儀なくされたことをきっかけに認知症を発症してしまう例もあるのです。このような心身の変化は、リハビリを行っても改善しきれないことがあり、これまでの生活が難しくなってしまいます。
高齢者が転倒しやすくなるメカニズム
高齢者が転倒しやすくなる大きな原因に「老化にともなう生理的変化」と「運動不足による筋力低下」があります。
老化によって、視覚、聴覚、バランス機能、歩行能力、心拍数、心拍出量など、さまざまな身体機能が低下していきます。身体機能が低下すると、危険を予測して避けることができずに転倒したり、立ち上がった際にふらついて転倒したりということが起こるのです。
定期的な運動習慣をもたない人の多くは、筋力が標準より低下しています。筋力が低下していると、老化によるバランス機能の低下によって、ふらつきを起こしたときに姿勢を瞬時に立て直すことができずに転倒しやすくなります。「老化にともなう生理的変化」と「運動不足による筋力低下」は、このように相互に影響しあっているのです。
3つの運動で転倒予防!
家の中でも手軽にできる転倒予防につながる運動をご紹介しましょう。
運動は週に2~3回を目安に続け、運動に慣れたら少しずつ回数を増やしてみてください。
椅子を用いた運動
1. 椅子に浅めに腰をかけ、背筋を伸ばして姿勢を正す
2. 片足を床につけた位置からゆっくり膝を伸ばし床と水平になるまで足を上げ5秒保つ
3. 足をゆっくりとおろして床につける
上記を、片足ずつ各5~10回繰り返しましょう。運動に慣れるまでは、ひじ掛けのある椅子で運動すると体を安定させることができます。ポイントは、筋力を高めるために、無理のない程度にゆっくりと行うことです。
立位で取り組む運動
つま先立ちで、ふくらはぎをトレーニングする方法です。
1. 足を肩幅に開き片手又は両手で椅子の背もたれや手すりをもって体を支える
2. 両足のかかとをゆっくりと高く上げ、ゆっくりと下げる
足の動きに慣れてきたら、お腹やお尻にも力を入れて姿勢を正すことを意識して行いましょう。各10回を1セットとして行います。
運動前後のストレッチ
運動の前後にストレッチを行うと、けがの予防や疲労の回復につながります。太ももの前側をストレッチする方法です。
1. 足を肩幅に開き、片手で椅子の背もたれや手すりをもって体をきちんと支える
2. あいている手で、同じ側の足首をもちかかとをお尻につけるように膝を曲げる
3. 左右交換しながら、両足をストレッチする
各10回を1セットとして行いましょう。
まとめ
転倒を予防して長年続けてきた家族のライフスタイルで快適に過ごしていけるように、転倒しにくい環境や心身の健康状態を整える工夫をしていきましょう。